熊本ここだけの話
細川イズムとアールデコ
細川コレクション永青文庫の常設展示室がツツジの花で囲まれた県立美術館に開設した。併せて開館記念展として「細川歴代の文と武と美」が本館2階で行われている。
中世・足利時代の頼有、頼之から始まり、近世初代の藤孝、忠興、忠利から現在に至るまで700年に亘っ て栄えてきた細川家の歴史に接することができ大変興味深い。
細川家はまさに“文武両道”である。戦乱の世の中を生き抜き、江戸300年の政治と文化を享有してきたその足跡がまさに現在の熊本の経済と文化につながっている。
よく知られている藩主は、近世初代の藤孝(幽斎)や、あのガラシャを妻にもつ2代目忠興、加藤家の後に小倉から肥後熊本藩の藩主として入封し、後に剣豪宮本武蔵を迎え入れたことでよく知られる3代目忠利、宝暦の改革と呼ばれる藩政改革を為し、教育立県の礎ともなった“時習館”を創設したことでも知られる8代目重賢などだ。
いくつかの興味深い史実にも接した。忠利死去をめぐり、忠利によく可愛がられていた阿部兄弟の一人が抗議の意味で自分の髷を墓前に差し出し兄弟皆処罰されたこと。森鴎外の「阿部一族」は、これを基に書かれているそうだ。また、5代宗孝は江戸城中で九曜の家紋を間違われ人違いで斬られた。これを機に細川家の九曜紋がそれぞれの紋を離した“離れ九曜紋”に変えられたこと。
一方、何といっても焼き物や美術品に代表される細川家の芸術文化は圧巻である。
それぞれの藩主が書いた書は、七言絶句や五言2句など時代によってスタイルは違うが見事だ。楽焼は気品漂う黒と、しっとりとして且つ華のある赤も大変美しい。また、美術の殿様と言われた16代護立氏は一級の美術品を収集し、財団法人永青文庫を設立し今日に継がれているが、どれも超一級品ばかりである。
細川コレクションは、産業と芸術が融合された文化のような気がする。それはあたかもバロック、ロココからアールヌーボー、アールデコへと変遷していく西欧の芸術文化の歴史を思い起こさせる。
芸術だけを求めてもそれは一部の人たちだけの世界、また、機能性だけを求めても無機質なものになる。
これらがバランスよく調和されているからこそ100年近く立ってもアールデコが支持されているのである。
そして、細川イズムがもたらした熊本版アールデコは、18代当主、ときの熊本県知事だった細川護熙氏によって事業化された「くまもとアートポリス」に継承されている。
若葉かおる二の丸公園に立つ県立美術館でのこの展示は7月6日までが第一部で、その後、12月24日まで“大名調度の美”、“能面能装束の美”、“武具の美”と題して第二部が開催される。
熊本の文化は何とも奥が深く、感動を与えてくれる。
(企業立地課 小野上)