熊本ここだけの話
1000年の命
1000年の命
山都町に「清和文楽館」という施設がある。年間10万人を超す観光客が訪れる文楽舞台の施設であるが、特に建築関係者の間では世界的に有名な建物である。
建物の中に入るとすぐに目につくのが木造在来工法による独特の木組みである。日本を代表する建築家の石井和紘氏の設計によるこの建物はバット工法、騎馬戦工法などと呼ばれる独特の木組みで、素人の我々でもそのダイナミックさに圧倒される。
清和文楽館は県が1988年から実施している「くまもとアートポリス」事業によって立てられた建造物であるが、1000年の命を宿した建築の偉大さを改めて感じる話である。
普段はしいたけを栽培しているおばちゃんたちがこの文楽館に集まり、若い太夫との二人三脚で観客を引き付ける文楽芝居を演じ、「阿波の鳴門」や「壷坂霊験記」など日本の伝統文化の良さをひしひしと感じさせてくれる。
そよ風が吹くまち
清和文楽館から車で15分ほど走ると、同じ山都町の蘇陽地区(旧蘇陽町)に着く。十数年ほど前から九州のへそと称しそよ風が吹くまちを売り出そうという試みが為されており、特産のブルーベリーの販売施設やスポーツ施設の整備など「そよトピア」という事業に力を入れてきた地域だ。四季の移り変わりが美しい「蘇陽峡」やアウトドアライフの代表格でもある「服掛松キャンプ場」など自然の素晴らしさが体験できるゾーンである。
蘇陽地区の中心商店街が馬見原と呼ばれる昔ながらの宿場町である。宮崎県の一部が生活圏域に入るという地区で、椎葉トンネルの防災協定には椎葉村と五ヶ瀬町と旧蘇陽町が名を連ねる。
この地区に流れる五ヶ瀬川に馬見原橋というユニークな橋が架かっている。長さは38mの小さな橋であるが、車道橋の下に歩道橋が弧を描いており、夏場夕涼みに来た地元の人たちのコミュニケーションの場にもなっている。これもくまもとアートポリス事業によって完成した橋である。
山都町はその名のとおり都市部では味わえないさまざまな魅力を持った地域だ。名工岩永三五郎が手がけた国の重要文化財「通潤橋」や、紅葉が美しい[緑仙峡」など見所がいっぱいだ。
しかし自然の良さもさることながら何といってもそこに住んでいる人たちの輝きが一番である。文楽館の人形使いのおばちゃんたちの流す汗に人は魅かれて訪れる。
観光とは光を観ると書く。地域が輝き、人が輝くことによってそれが観光につながっていく。元文楽館長の兼瀬さんの口癖であったが名言である。
9月14日は折りしも文楽の里祭りが開催されていた。人の輝きを観にきた人たちが祭りをとおして自ら輝いていく、そんな出会いとコミュニケーションが熊本にはたくさん残っている。
(企業立地課 小野上)
~住んでみたい行ってみたいまち くまもと①~