熊本ここだけの話
散策からの知恵
先日京都御所を散策する機会を得た。中学校の修学旅行以来足を踏み入れてなかったが、約20haもある敷地は何しろ広い。
京都御苑と呼ばれる緑の中では、散歩を楽しむ人や バードウォッチングをしている外国人、ベンチで読書をしている人、さまざまな光景が目に入ってくる。御所の中に入るには予め手続きが必要とのことで、鎌倉から明治の初期まで天皇が執務を執った紫宸殿(ししんでん)などには入れなかったが、いろいろなことを空想しながらのしばしの散策は、贅沢な時間をいただいたようで心が弾んだ。
東京の臨海副都心「お台場」は、お台場海浜公園や潮風公園、大江戸温 泉物語などが並び、家族連れやカップルに大変人気のあるリラクゼーションスポットであるが、ショッピングモールの中にも屋外ウォーキングデッキが続いており、ここでもやはりいろいろな人が散策を楽しんでいる。
20年前、ヨーロッパに音楽の旅をしたことがあるが、ウィ
ーンの郊外ハイリゲンシュタットに行った際に、「ベートーベンの散歩道」と言われる小さな道を散策したことがある。行きたいスポットの一つで憧れの小路であったその散歩道で、ベートーベンは手を後ろに組みながら毎日のように散歩をしたらしい。耳が段々と聞こえなくなるという、音楽家としては致命的な病気と闘いながら、木々や小鳥たちに大きな声で話しかけ、あの交響曲第6番「田園」を作曲したというエピソードは大変有名だ。彼の頭の中はきっと音楽のことで一杯だったのだろう。そして彼を救ったのは、ほかならぬ毎日の散策だったに違いないと思う。
さて、熊本での散策の場所といえば、県庁のすぐ近くの江津湖だろう。昼休みになると多くの県職員が散歩を楽しんでいる。健康のためだという理由が最も多いが、川の風景を楽しみながらの散策はつかの間のリフレッシュにもなり、これからの季節その数も増えてくる。
築城400年を迎えた熊本城でもたくさんの人が散策を楽しんでいる。人との出会いに感謝したり、新たな仕事の創造をしたり、自称ベートーベンみたいな人もいたり、さまざまな人間社会のうごめきを楽しみながら人は散策を楽しむ能力を持っている。
熊本は自然が豊か、つまり散策を楽しみ、散策からの知恵を産み出す宝庫でもある。
(企業立地課 小野上)