スタンフォード便り
ポリティカル・トライアスロン
スーパー・チューズディ(2008年2月5日)が過ぎ、ここベイエリアでは、一山超えたような落ち着きが戻ってきました。よくアメリカの大統領選挙はトライアスロンに例えられるようです。
全米50州で行われる選挙毎に、候補者が一人抜け、2人抜けしていく様子や、報道される候補者の演説を聞いていて、これまで通る声で雄弁に演説していた候補者が、かすれた声で選挙後の自らの結果についてコメントするのを聞いたり、選挙参謀が入れ替わった、或いは首にした等というニュースが伝えられる度に選挙戦の激しさを感じます。
スーパー・チューズディ前後数日は、まるでお祭り騒ぎでした。
これまで日本から遠目に見ていただけの大統領選挙を、今回は地元の人々の反応を目の当たりにしながら、観察することができ、私自身これまでになく興奮しています。
アメリカの有権者は、過去経験のない選択を強いられる今回の選挙を楽しんでいるようです。
スーパー・チューズディ当日、午前7時から投票が始まりましたが、ちょうど私が早朝ミーティングを終えて午前8時頃、近くの教会をのぞいてみますと、既に投票の順番待ちの列が出来ていました。
アメリカの投票所は、実に色んな所に設置されています。教会、コミュニティセンター、学校はもとより、コインランドリーやコンビニまで、有権者にとって便利のいい場所が投票所として指定されています。
投票に参加するには、事前に登録をしなければなりません。日本のように住民票にもとづいて、有権者に自動的に投票権が与えられるシステムとは異なり、アメリカでは、自ら投票をするための登録を事前に済ませた人だけが投票権を持つのです。各選挙毎に登録を必要とする、つまり、今回は2008年大統領選挙のための有権者登録をしなければなりません。ある友人は、以前住んでいた住所で別の選挙の登録はしたが、引っ越した後、住所変更をしておらず、住所変更の手続きをしなければ有権者登録できず、手続きが面倒なので、有権者登録をしていない、従って、今回自分は投票できないと言っていました。
投票は、郵送と投票所へ直接行って投票する方法と2種類ありますが、郵送の場合、投票日の1週間前迄に必着が条件で、また、投函した管轄郵便局印と実際の有権者登録地とが異なる場合には、投票は認められないそうです。
こういう点も、国政選挙では日本国内のどこに住んでいても、或いは、国外にいても在外公館で登録をしておけば投票権が与えられる日本とは異なります。
実際の投票は、電子投票と記入式と2種類あるそうです。カリフォルニアでは電子投票が主体ですが、州によって事情は異なります。カリフォルニアでも、有権者がどうしても記入式がいいと主張すれば記入式で投票も可能とのことでした。有権者は投票所に行くと、自分のID、有権者登録の証明書、それに投票権を当局に示し、投票をします。
午後8時迄投票が行われ、路上では、若者達が「バラク・オバマ」や「ヒラリー・クリントン」のプラカードを持って、投票時間が終了するギリギリまで投票を呼びかけていました。日頃は運転マナーのいい人たちですが、投票日の夜は、通りのあちこちでクラクションが鳴り響き、オバマ支持者やクリントン支持者が気勢をあげて、いつになく騒々しい夜でした。
今回の選挙では、これまでになく、若者達が大統領選挙に熱くなっているようです。
各候補者の支持者、特にオバマの支持者には若者が多く、みんな手弁当で、応援をしているそうです。
スタンフォードの熱烈なオバマ支持の学生は、「オバマはアメリカを根底からチェンジしてくれる。ヒラリーはクリントン時代をリピートするだけだ」とのこと。世代毎の投票結果によると、若者票はオバマが獲得したようです。
投票日翌日、オバマが善戦したこと、カリフォルニアではヒラリーが勝ったことが盛んに報道されましたが、カリフォルニアでオバマとヒラリーが僅差であったことが驚きを持って伝えられていました。ほんの2ヶ月前までは、両者は20%も差があったのに、今回は5%程度に縮まっていたというのがその理由のようです。
最近のアメリカの経済は、サブプライムローン問題が深刻になり、明るいニュースが聞かれることが少なくなっています。
選挙戦が加熱するにつれて、ブッシュ大統領の影が薄くなっていく中、全ての問題を一挙に解決してくれる将来への夢を託せるリーダーは誰なのか、アメリカの有権者はどの世代も真剣に考え始めています。
「変革」をテーマとして掲げ、アフリカン・アメリカン初の大統領となることを目指すオバマか、クリントン元大統領時代のファーストレディとして、また大統領の片腕としての有能さを発揮し、女性初の大統領となることを目指すクリントンか。
ここに来て、最近の新聞の社説を読んでいると、多くのアメリカ人の中には依然として、ジェンダー問題については保守的な考え方が主流だという意見が載せられていました。つまり、優秀な女性の下で仕事をすることへの違和感が、男性にも女性にも、まだ強いというのです。
ヒラリーは、大統領選を通じて、全米にこのジェンダー問題にも一石を投じています。
今年11月迄の長丁場、今後の大統領選挙の流れの中で、アメリカ人の人種、ジェンダー等についての様々な本音が見られることになると思います。