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スタンフォード便り

大混乱の聖火リレー

2008/04/11 09:44

「まるで当局の保護管理プログラムで警護されている証人のようだった・・・」とは地元サンノゼ・マーキュリー紙の人気チーフエディターのコメント。
既に各マスコミで報じられているとおり、昨日4月9日、サンフランシスコで行われた聖火リレーは、前代未聞の「隠れんぼ」リレー(現地では、レオナルド・ディカプリオが主演した高校生詐欺師の映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002年製作)」と副題付き)として報道されました。

確かに前日から、聖火リレーのスタート地点であるサンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地AT&Tパーク近くの埠頭付近や、ゴール地点であるゴールデンゲートブリッジ付近には、チベット問題など中国の人権抑圧を非難する団体などのほか、北京五輪を支持する中国系米国人らも結集し、互いににらみ合う異様な空気に包まれ、本番での衝突が恐れられていました。
そこで、サンフランシスコ市長は当日、治安面での措置として、ルートを半分に短縮することを発表し、最初の走者が登場、トーチに採火されると、突然、第1走者は倉庫の中に姿をくらませてしまい、会場は騒然となりました。見物人が走者を探して大騒ぎする中、しばらくして複数の車両が別々の方角に走り出し、水上スキーや船舶まで出発、この裏をかく作戦が成功し、メディアまでもが煙に巻かれてしまったという感じでした。
結局、聖火は当初予定されていた海沿いのコースとは離れた市役所近くの大通りに、バスから降りて登場。警官らが厳重に包囲する中、市北西部のゴールデンゲート・ブリッジに向けて走り出し、その後再びバスに戻った後、そのまま空港に直行ということになりました。
そもそも、サンフランシスコがアメリカで唯一の聖火リレー会場となったのは、全米で最も中国系米国人が多く住んでいる町だからとのこと。この後、聖火は中華航空に乗って、南米ブエノスアイレスへ旅立ちました。

サンフランシスコ市当局も、参加した聖火ランナーも、オリンピック委員会も、中国政府もみんな、何事もなく終了し、成功だったと喜んでいるようです。サンフランシスコ市では、直前まで聖火リレーの中止も考えていたそうです。それだけ、差し迫った危険な状態にあったと言えましょう。
今回の聖火リレーについては、賛否両論言われていますが、アメリカ全体に後味の悪さを残したことも事実です。
何しろ、「正々堂々とスポーツ精神に則って・・・」という代表のようなオリンピックの象徴である聖火が、暴動を恐れて「こそこそと」リレーされたのですから。

「スポーツと政治は別」という議論がありますが、過去、オリンピックは様々な政治的プロパガンダに利用されてきたことも事実です。残念ながら4年に1度のオリンピックは、「政治」と全く切り離して考えることは非常に難しいようです。
過去さかのぼると、第2次世界大戦時(1936年)には、ナチスドイツがベルリンオリンピックをナチスの勢力誇示に利用しましたし、30年程前の1980年のモスクワオリンピックでは、ソ連のアフガニスタン侵攻を非難して、アメリカ、日本を含めて多くの国がオリンピックをボイコットしました。

今回のオリンピックでは、チベット問題が大きくクローズアップされています。ヨーロッパでは聖火リレーが大混乱になりました。これだけ問題になるのは、今回のオリンピック会場が北京であるからというのはもちろんですが、中国が押しも押されもせぬ経済大国になり、世界に対して大国としての責任を果たす立場になったということも大いに関係すると思います。

中国系米国人学生に今回の聖火リレーについて尋ねてはいませんが、次回クラスで会った時には意見を聞いてみたいと思います。

アメリカ国内では、民主党大統領候補のオバマ氏やクリントン氏を始め、各界から北京オリンピックの開会式へのアメリカ大統領が参加することに反対する意見が続々と表明されています。
中国は大国らしい懐の深さを世界に示し、チベット問題に対しても、世界が納得するような責任のある説明をしてもらいたいと思います。
そして、オリンピックを目指して、日々精進している世界各国の代表選手達が気持ちよくプレイできるような大会になって欲しいと心から願います。