スタンフォード便り
アントレプルナール、夢は宇宙へ
「アントレプールへの提言~テクノロジー最前線からのインスパレーション~」と題して開催された、TieCon2008というイベントに参加しました。
毎年開催されているもので、主催はThe Indus Entrepreneurs(インド人のアントレプルナール支援組織)で、各業界の最新情報の提供とアントレプルナールとシリコンバレーのVC(ベンチャーキャピタル)との出会いの場の創出という観点から、15年も前から、規模の大小はあったものの毎年開催されています。
地元誌[マーキュリーニューズ」によると2日間で4,000名が参加し、ソフトウェア開発、モバイル、コンピューター、ライフサイエンス、環境等、幅広い分野において、日々新技術・新ビジネスモデルの開発に研鑽している最前線企業からの様々な提言がありました。
このTieConの素晴らしい点は、そもそもは「インド人のアントレプルナール」のための支援組織なのですが、国籍、ビジネス分野等にこだわらず、幅広く会員を受け入れること、長年の活動にも当初目的からずれてしまったり、名前だけの組織になったりせず、年月をかけて着実に、シリコンバレーの数多あるネットワーク組織の中でも、特に注目される組織として成長していることです。
今回のTieConの目玉は、何と言ってもTesla Motors(テスラ・モーターズ、www.teslamotors.com)のCEO、Elon Musk氏の講演会でした。
テスラモーターズ立ち上げ当時の苦労、会社創設から販売に至るまでに予想以上に時間がかかってしまった事、それに伴う苛立ち、多くの課題をいかに乗り越えてきたか等、大変なはずのこれらの話が、Musk氏によると何でもない事にようにさらりと語られました。ポイントは、「同じ志を持った有能な仲間がいたから」乗り越えることができたそうです。やはり、ここでも必要なのは、「人」とのつながりのようです。
会場には、2008年モデルのテスラ・ロードスターも登場しました。
講演の最後に、実際にMusk氏が乗車し、走行させましたが、イグニッション時の静かさとスムーズさに驚かされました。Musk氏とロードスターの周りには、大きな人だかりができ、しばらく質問攻めにあっていました。
そのお陰で、主催者側は次の講演に進むことができず、スケジュールが30分以上も押してしまうという珍事も発生した程です。
テスラ・モーターズと言うと、皆さんご存知と思いますが、2003年に電気自動車開発企業としてスタートしており、グーグルの創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、Paypalの共同創業者でもあり同社CEO、Elon Musk氏の共同出資によって創設された企業ということで注目を浴びました。
同社の受注者リストには、カリフォルニア州のシュワルッェネッガー知事や俳優のジョージ・クルーニー等の著名人も名を連ねていることでも知られています。
動力源はリチウム電池で、排ガスゼロという点が最大の特徴であり、フェラーリ並みの加速性、3時間の充電で約220マイル(約354km)走行可能で、コストの点からいうと、1マイル(約1.6km)2セント(約2円)以下とのことです。
これは、現在のシリコンバレーのガソリン代が、1ガロン(約3.8L)約3.5~4ドル(350円~400円)ですから、プリウス(20.3km/L)と比較しても約3分の1の燃費効率の良さということになります。
2003年の創業以来、長年販売が待たれていましたが、2年前からようやく実際に販売をスタートしました。
今年に入ってロスアンジェルスに1号店がオープンし、2号店も今年中にシリコンバレーにスタートさせるということです。
価格はスポーツカータイプ(2人乗り)で、1,100万~1,300万円、現在、セダンタイプも準備中で、セダンタイプは1,590万円~となる予定ということでした。年間に100台生産ということで、今、注文しても、入手までには12~15ヶ月も待たなければなりません。
それでも、来場者の同車への人気はかなり高いようで、販売価格を聞いた後、セダンタイプが発売されたらすぐにオーダーしたいと挙手した人が、500人程の聴衆の中で1/5程はおり、同車人気を改めて感じました。
テスラモーターズの経営は、販売店のオープンにこぎつけ、一息ついた感のあるMusk氏は、次の挑戦を聞かれ、宇宙への夢を語ってくれました。
Musk氏は、SpaceX(www.spacex.com)という民間の新興ロケット打ち上げ会社を2002年に設立して、ロケットやスペースシップの開発を行っています。
昨年にはNASAとも正式に契約をし、これから低コストのロケット打ち上げへの新たな挑戦が始まるそうです。
「地球環境への貢献、そして新たなる宇宙へ民間人が誰でも行けるようにすること」。これが今後も同氏が引き続き目指して行きたいテーマだそうです。
これまでは、政府規模の予算を費やさなければ、民間では実現不可能だと思われていた宇宙空間への道が、Musk氏の挑戦によって、大きく開けてきました。
「母なる地球を守り、さらに宇宙の未知なる空間へ」。
アントレプルナールの途絶えることのないチャレンジが続きます。
この動きが、人々のロマンをかき立て、さらに新たなるビジネスを生み出していくパワーとなっていくのだと思います。